ホーム 未分類 海底探査技術開発プロジェクトDeSETの成果が論文発表 〜底棲生物シビレエイを用いた海底地形図作成の可能性〜

海底探査技術開発プロジェクトDeSETの成果が論文発表 〜底棲生物シビレエイを用いた海底地形図作成の可能性〜

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株式会社リバネス(本社:東京都新宿区、代表:井上 浄、以下「リバネス」)は、2017年より、日本財団および一般社団法人日本先端科学技術教育人材研究開発機構(JASTO)との共同事業としてアカデミア、ベンチャー、町工場、大企業の異分野融合による革新的な海底探査技術の確立を目指した、「海底探査技術開発プロジェクト(以下、DeSET)」を運営しています。

今回、DeSET第1期(2017-2019)の採択テーマ「音・光・生物を利用したリモートセンシングによる海底探査の実現」の研究開発の成果の一環として、理化学研究所 生命機能科学研究センター集積バイオデバイス研究チームの田中陽チームリーダーを中心とした共同研究グループにより、底棲生物[1]であるシビレエイ[2]の自律的な動きを利用し、海底地形図の作成が可能であることが実証されました。

本研究成果は、海底の地形情報を幅広く社会に還元し、さまざまな分野で役立てることに貢献すると期待できます。

 

現在、地球上の海底でXY軸方向の分解能が100mを切るレベルで明らかにされている領域は、全体の約19%程度しかありません。未解明の領域が明らかにされることは、海底資源探索や、海底ケーブルの安全な設置、より精細な気候予測、地震による津波の予測など、様々な方面で人類の生活に寄与することが期待されます。しかしながら、従来の技術では膨大な費用と数百年にわたる年月が必要だと言われており、実現に向けて大きなハードルがある調査領域です。

DeSETは、この課題に対して、2030年までに残された約8割の未解明領域を明らかにすることのできる新たな技術を日本で開発することを目標に掲げ、2017年4月に始まりました。大きな特徴として、分野の壁を超えて研究者、技術者がチームを結成し、低コストかつ迅速に海底地形図を明らかにする技術を開発することに重きを置いています。

今回、本共同研究グループは、従来の計測機械を用いた海底探査とは全く異なる、底棲性で電源としても使えるシビレエイを生物エージェント[3]として用いた方法を提唱し、その手法の妥当性を検証しました。まず、大型水槽でシビレエイの撮影動画から動きをプロットし、シビレエイがほとんどの時間、底付近を動いていることを確認しました。次に、シビレエイに小型音響送信機のピンガー[4]を装着して海底に放ち、その位置を追跡することにより、海底の地形情報が得られることを実証しました。これは、底棲生物を用いた海底地形マッピングの可能性を示した初めての例です。

本研究は、科学雑誌『SN Applied Sciences』に近日掲載予定です。

シビレエイを利用した海底探査法(左)と海底での実証データ(右)

研究の詳細はこちらもご参照ください。→理研 プレスリリース


<共同研究グループ>

理化学研究所 生命機能科学研究センター 集積バイオデバイス研究チーム
チームリーダー     田中 陽  (たなか よう)
研究員         船野 俊一 (ふなの しゅんいち)
上級研究員       田中 信行 (たなか のぶゆき)
技師          天谷 諭  (あまや さとし)

株式会社アクアサウンド
会長          笹倉 豊喜 (ささくら とよき)

水産大学校
名誉教授        濱野 明  (はまの あきら)

<研究支援>

本研究は、日本財団、日本先端科学技術教育人材研究開発機構(JASTO)、株式会社リバネスによる海底探査のための技術開発プロジェクト「DeSET」と、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金挑戦的研究(萌芽)「生物と機械のハイブリッドロボットによる海底・宇宙探索(研究代表者:田中陽)」による支援を受けて行われました。

また、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター宮下和士教授、島根大学エスチュアリー研究センター南憲吏助教の実験協力によるものです。

<DeSET>

DeSETは、2017年4月から開始された、公益財団法人日本財団、日本先端科学技術教育人材研究開発機構(JASTO)、株式会社リバネスの共同事業。本事業は、XY軸方向の分解能が100m以下の海底地形図を地球上の全海域に渡って作成することを最終目標とし、その実現を飛躍的に加速しうる技術を日本国内から生み出すことを目的として行われている。 ウェブサイト:https://deset.lne.st/


[1] 底棲生物

水域に生息する生物の中でも底質に生息する生物の総称。貝類や甲殻類、棘皮動物などがその代表的な例であるが、今回用いたエイの中にも底棲性のものがいる。

[2] シビレエイ

デンキウナギ、デンキナマズと同じく強い電気を発生する強電気魚の一種。全長35cm程度。一部の種は日本近海にも生息する。使用した種の学名はNarke japonica

[3] 生物エージェント

ここでは海底探査を、人や機械の代理(エージェント)として担う生物という意味。

[4] ピンガー

魚などの海中生物の行動を研究するために開発された小型の超音波発振器のこと。超音波を送出するとき、ping ping と音がするのでピンガー(pinger)と呼ぶようになった。

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